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シニアの田園回帰に吹く逆風

 団塊の世代のふるさと回帰が、世にウェーブを引き起こすのではないか、とかつて叫ばれた。 もう10年以上も前のことになる。ついで、その余波に乗るように私たちの世代がある。
 これらは、確かにひとつの社会現象として、全国津々浦々に及んだ。テレビ朝日『人生の楽園』は、その実例を幾分かすくい取ってお茶の間に現れ、根強いファンをつくった。
 本来、この層が持つエネルギーは、一国を動かすほどに甚大だ。その割に、ウェーブに達せず、漣ほどの動きにしか捉えられなかった気がする。何故か。資産も経験も豊富で、地方移住の先鞭を切るべく一群、その多くが一歩を踏み出せず、さらに今なお大きな壁に阻まれ、曲がり角に立ってしまった。
 結論から先に言ってしまうと、つまりは、資産という投資力や、積年の経験値が、この場合、利する方向に働かないということだ。
 あの時期、ふるさとへの回帰願望を4割のシニア代都市生活者が持っているという調査があった。今は2割を切るという。調査機関や方法、内容の違いがあるから、正鵠な比較とは言えないが、“人財”の関所止めはいかにも残念である。

 預貯金や退職金など、シニア層は相応の資産を持つ。
 だが、それだけで余生を悠々自適におくることができる人は一握りにしか過ぎない。その資産をはたいて事業を起こすのもリスキーである。取り崩してしまえば、この年代、リカバリーが効かない。定年後の収入と言えば、年金しかあてにできないからである。
 年金制度の改正が、その不安に輪をかけることになった。例えば、50歳で地方に転身しようとすると、向こう15年の生活手段を講じなければならない。50歳に就業の道は険しい。帰農しても収益までの道のりはほど遠い。起業は誰しもがおいそれとできるものではない。頼みの年金も、これから先、どうなるものか予断を許さない。
 人生経験が豊かであることが、この場合、ネガティブに働く。リスクを先読みして、ヘッジしようとする。その上、伴侶の理解が得られないなどとなると、もう袋小路に入ってしまい、消極的選択として現状維持の道をたどることなる。

 もうひとつ、気づかれにくいことだが、動機の問題があるのではないか。
 シニア層の動機の中心にあるのは“自分の人生”であり、“自分(たち夫婦)の幸せ”である。これが悪いわけでは、もちろんない。
 だが、若いお父さんやお母さんたちが、わが子の育児や成長のために田舎に住もうとする姿勢とは明らかに異なる。人間は、愛する者のためであれば、相当の苦労を乗り越えていける。しかし、自分のための行動であれば、自分のためにならないと分かった段階で簡単に諦めてしまうものである。

 地方移住は、人生の不連続点である。そこにまたがる川なり、谷なりを跳び越えるエネルギーが要る。さらに、靄の中を、足元をとられぬように前進しなければならない。
 私は、その大変さには、質の差はあれど、シニアと若い世代の違いは根本的にないと思っている。だから、シニア層に吹く逆風は、他でもない、自らが吹かせてしまっているのではないか、と観ている。いくつかの外的要因も在るが、殆どは本人の内面に関わることである。
 日本版CCRC構想が、国や地方自治体によって進められようとしている。これは、大枠、進めていくべきと私は思う。ただ、これを活かすも殺すも、アクティブ・シニアのアクティブな関わり次第とも感じている。
 そのためには、多様な情報をどのようして正確に手に入れるか、そしてそれを分析しながら、自分自身の内面をどうやって整理し、行動につなげていくか、という個々人のプロセスが極めて重要になってくる。
 では、どうしたらいいのか。
 少し日にちをおき、次回のタイミング以降でゆるゆると考えていきたい。まずは、FPの参考として、田舎暮らしの値段に触れてみることにしよう。

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考えても結論の出ないことですが、考えないと始まりません

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