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若者たちの田園回帰Ⅰ

2016年02月15日 徒然日誌(余話)
 若い世代の一群に、地方移住のうねりが高まったのは、この3-4年ほどのことになる。
 私たち夫婦が移住した2010年当時は、団塊世代のふるさと回帰がひと段落し、これから若年層に移行するではないかと云われた狭間期だった。しかし、当時の関係者でも、これほど波が急に押し寄せてくることは想像だにしなかったろう。
 私は、団塊の世代の背中をみて育った。そして、いまムーヴメントを起こそうとしている若者たちは、息子や娘と同世代になる。こういう立場に居るものとして、この動きに強い関心と興味を持っている。

 団塊の世代の移住の多くは、地方の出身者がその、若しくは近隣の地域に還ることであった。UターンやJターンが主流となる。預貯金や退職金、あるいは60歳になれば満額でもらえる年金を原資とし、贅沢さえしなければ、お金にガツガツせずに暮らしていける。第二の人生をふるさとでのんびり過ごす、ということが目的であった。
 一方、若者集団はそうではない。首都やその周辺都市で生まれ育ち、地方生活の経験がない人も多い。そういう彼ら彼女らが、まったく縁のなかった地域に、これから広がっていく自分の人生を重ね合わせるように移り住もうとしている。生活の糧をどう得ていくか、というのが大きな課題であり、地方に眠っている可能性を掘り越すことに活路をみいだそうとしている。

 最大の相違点は、団塊の世代のブームが、個々人の、つまり点の集まりで終息したのに対し、若者たちは「一群」となっていることである。SNS等を媒介して、様々な情報や知恵の交換がなされ、移住した人と移住しようとする人、興味を持ち始めた人とがつながっている。地方出身者で、ふるさとに何らかの力になりたいというグループも、そこにからまって、ひとつの社会運動になりつつある。
 東日本震災がターニングポイントとなった気がする。未曾有の災害の後も経済一辺倒に明け暮れる為政や消費の美徳を謳い続ける大企業とは一線を画し、それらに従属せず、成熟社会における新しい価値を産み出そうとするマグマが底流にある。
 それは、ワークライフバランスやイクメンに見る、人の働きようや男女・夫婦・家族のあり方、経済的に豊かなことが人生の豊かさであるのかという幸福の定義づけなどと根をひとつにするのではなかろうか。これからの社会をどうかたちづくっていくか、という命題である。

 私が、これら一連の動きに強い関心と興味を持っているのは、そこに自らの移住のモチベーションを見出すからであり、つまりはそれこそが田舎に住ながらやってみたいことなのだと直感するからである。
 社会価値は、ひとつの世代ではなく、いくつかの世代の層を重ね、バトンタッチしながら創っていくべきものである。いまの若者たちのムーヴメントを、私たちの世代がどのように受け止め、どうやって連帯し、自らの人生の棚卸しにつなげていくのか、大事な問いかけをされている気がする。

移住
秋田でも移住対策は熱心だが 本質は見逃されがちです

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