托卵をめぐる闘い
2009年10月02日 徒然日誌(余話)
先日の毎日新聞で、カッコウなどからの托卵に対抗するため、その「雛鳥」を巣から排除する習性を持つ鳥が発見された、という記事が掲載されていました。 カッコウやホトトギスの仲間は、自分では抱卵せず、ウグイスやオオヨシキリ、モズ等の巣に卵を産んで育てさせます。「托卵(たくらん)」と言います。
同じような体格の鳩あたりに托すのであれば、まだしもと思うのですが、自分よりもふた廻り以上も小さい種の鳥になぜ托卵するのか、不思議な習性です。
この片利片害の関係、仮親側に、なす術がないのかと言いますと、実はちゃんと学習能力があって、世代を重ねるうちに、見分けの進化が認められています。つまり、卵を排除するようになるのです。
カッコウの卵の模様に、もっとも近いのはホオジロなんだそうです。江戸の頃には、ホオジロが散々標的にされて、泣かされたらしいです。ところが、いまやもっとも見分け率が高く、つまり排除率が高いのが、このホオジロです。托卵の排除が遺伝するように進化が働いたということなのでしょう。いまやホオジロの巣は避けられるまでになっています。
となりますと、敵もさるもので、今度は標的を変えてきます。30年ほど前から、さかんに狙われたのがオナガというカラスの仲間でした。もともと平野の鳥であったオナガが山に入り、また山の鳥であったカッコウ類が平野に降りてくるようになってから、生息域の接触が生じ、それこそ「格好」の餌食にされたようです。
最初はやられっぱなしだったオナガも、しかし10年ほど経ちますと対抗手段を確立していきます。カッコウ類が敵であるという認識が出来て攻撃するようになり、また、卵を識別する能力も習得しました。カラスの仲間ですから、本来、学習能力には高いものがあります。
研究者は、今度はカッコウが卵の模様や大きさを変化させて、騙しのテクニックを高めるように進化していくのではないかと予想しています。
さて、このように托卵された卵を巣から捨てる行動は、一般に認められていましたが、いったん孵化した雛を捨てる行為は初めての発見となります。
オーストラリア北部に生息する体長10センチほどのハシブトセンニョムシクイという鳥。
立教大のチームが、その巣11カ所にビデオカメラを設置して、これまでにヒナを捨てる行為を4例確認したものです。卵の段階で捨てる方が余計な手間がかからないはずですから、これも不思議な生態です。
平和でのどけき春の野山に、じつはこういう闘いがあるのです。
そういう知識や視点を持ちながら、田舎暮らしをするのであれば、退屈になったり、飽きることはありませんね。
<闘いは続く> 左:カッコウ 右:オナガ

同じような体格の鳩あたりに托すのであれば、まだしもと思うのですが、自分よりもふた廻り以上も小さい種の鳥になぜ托卵するのか、不思議な習性です。
この片利片害の関係、仮親側に、なす術がないのかと言いますと、実はちゃんと学習能力があって、世代を重ねるうちに、見分けの進化が認められています。つまり、卵を排除するようになるのです。
カッコウの卵の模様に、もっとも近いのはホオジロなんだそうです。江戸の頃には、ホオジロが散々標的にされて、泣かされたらしいです。ところが、いまやもっとも見分け率が高く、つまり排除率が高いのが、このホオジロです。托卵の排除が遺伝するように進化が働いたということなのでしょう。いまやホオジロの巣は避けられるまでになっています。
となりますと、敵もさるもので、今度は標的を変えてきます。30年ほど前から、さかんに狙われたのがオナガというカラスの仲間でした。もともと平野の鳥であったオナガが山に入り、また山の鳥であったカッコウ類が平野に降りてくるようになってから、生息域の接触が生じ、それこそ「格好」の餌食にされたようです。
最初はやられっぱなしだったオナガも、しかし10年ほど経ちますと対抗手段を確立していきます。カッコウ類が敵であるという認識が出来て攻撃するようになり、また、卵を識別する能力も習得しました。カラスの仲間ですから、本来、学習能力には高いものがあります。
研究者は、今度はカッコウが卵の模様や大きさを変化させて、騙しのテクニックを高めるように進化していくのではないかと予想しています。
さて、このように托卵された卵を巣から捨てる行動は、一般に認められていましたが、いったん孵化した雛を捨てる行為は初めての発見となります。
オーストラリア北部に生息する体長10センチほどのハシブトセンニョムシクイという鳥。
立教大のチームが、その巣11カ所にビデオカメラを設置して、これまでにヒナを捨てる行為を4例確認したものです。卵の段階で捨てる方が余計な手間がかからないはずですから、これも不思議な生態です。
平和でのどけき春の野山に、じつはこういう闘いがあるのです。
そういう知識や視点を持ちながら、田舎暮らしをするのであれば、退屈になったり、飽きることはありませんね。
<闘いは続く> 左:カッコウ 右:オナガ
